今年の初めから2月中旬までの1か月半、インドの首都デリーで過ごしていたが、その間、のどがヒリヒリと痛み、咳が止まらなくなっていた。原因は大気汚染。昔からインドのコルカタやデリーに1週間いると、同じような症状が出た。東南アジアなどの経済発展著しい都市は、どこもひどい大気汚染なのだが、インドのようなのどの痛みにはなぜかならない。
それがネパールのエベレスト街道に戻ってきて、まだたかだか4日目だが、ずっと続いていたのどの痛みが嘘のように消えてしまった。デリーでのどの痛みが以前よりも激しかったので、風邪でも引いたのかなと思っていたが、何のことはない、やはり大気汚染が原因だったみたいだ。そんなことを思っていたら、先日、国際環境保護団体の「グリーンピース」と大気汚染を監視する「エアビジュアル」が、世界300都市を対象に大気汚染度を発表。その結果、なんとインド・ニューデリーが世界で一番ひどかったという。https://www.cnn.co.jp/world/35133718.html
たかだか1か月半しか滞在していないのに、これほどののどの痛みを感じるのだから、デリーで暮らさなければならない人たちは、もう命の危険性を感じてもいいレベルだろう。僕が子供のころ(もう50年ほど前)、日本が高度経済成長期の時に、光化学スモッグ情報というのが毎日流れていた。工場から排出される大気汚染度がレベルを超えると、学校の校庭に出て体育の授業や遊びをしてはいけないということが度々あった。そのころは、四日市ぜんそくなどの公害病も社会問題となっており、今のアジアの状況と同じことが、かつて日本でも起こっていた。その後、日本は世界でも厳しいばい煙排出規制などの効果で、大気汚染を実感することはなくなった。
ただ実際はどうだろう。東京の満員電車の中の空気はきれいだろうか。地下鉄の駅の構内は、よく見るといろんなものが漂っている。会社の中はどうだろう。空気はよどんでないかな?(これは大気汚染という問題ではなく、ストレスなどの意味かもしれないが…)。
ある日本の大学の先生?がエベレスト街道で大気汚染を測定したら、なんと0だったという話を聞いたことがある。ほんとかどうかよくわからんが、この満天の星空を見ていると、大気汚染なんてないのだろうと実感できる。
「空気はタダ」と昔は言われてきた。しかし現代は決してそうではない。インドでタダの空気をいっぱい吸っていたら、喘息になって多額の治療費がかかるだろう。日本だって、工場のばい煙を減らすためにどれほどの費用が掛かっているのか。それほどひどくなくても、東南アジアの都市では、人々がマスクをしている姿をよく目にする。多少なりとも費用が掛かる。
僕がきれいな空気を求めて今「プチ移住」しているこの村では、きれいな空気をタダで思いっきり吸える。しかし、ここまで来るのに高い航空券を買い、数日歩いてこなくてはならない。
現代では、きれいな空気はもうタダでは手に入らないものになってしまった。