クンデ村に来て早々、村人総出のプジャ(ご祈祷)が2日間にわたり村のゴンパ(寺院)で行われた。この冬、立て続けに村の人が3人も亡くなったという。その中には若い方もいたということで、村の不幸を一掃しようということで急遽、行われることになったという。2日間にもわたる大祈祷は準備も費用もかなりかかるので、数年に一回しか行われないという。それだけ村の人の中には不安が募っているということだろう。
プジャが行われるクンデゴンパは村のすぐ裏山の中腹にある。朝は快晴、寺院から見るクンデ村にはまだ雪が残っている。
朝7時半、まず寺院の外にある焼却炉みたいなところで枝葉を燃やし煙を立てるところから始まる。これは祈祷が終わるまで絶やしてはいけないらしい。その後、お堂の中にラマ教の僧侶たちが座り、読経が始まる。
昨年の滞在でも個人宅のプジャは何回か見学させてもらい、その時にも書いたことだが、ラマ教の読経は時折、いろいろな楽器を演奏し、とてもリズミカルだ。読経の言葉はわからないが、この宗教音楽を聴いているだけでも全然飽きない。特にこの大きなホルンのような楽器の「ブオ~ン、ブオ~ン」という音は、腹の底に響くほど独特の低音だ。
さて、プジャの方は1日目は夕方まで祈祷が続き終了。2日目は午後3時前に祈祷が終わり、寺院の中に安置されていた神輿のようなものが外に出された。前にはシェルパ族の衣装を着た人形が飾られている。
準備が整うと、その神輿を村人が担ぎ、行列が出発。下に降りて、そのまま村のはずれに向かい、まだ雪が多く残る道を進んでいく。
村はずれの大きな岩の下に到着すると、神輿は地面に置かれ、僧侶たちが読経を始める。村人がぐるりと囲み見守る中、まず山積みにされたかごや木々などに火がつけられる。そして読経のさなか、合図が僧侶からなされると、村の人が神輿を担いで火の中に投げ入れる。こうして村を覆っていた悪霊を葬り、村の幸せを願うという2日間にわたる大祈祷は終了。
普段はひっそりと暮らしているように見えるシェルパ族も、このような重大な行事がいざ行われるとなると、みんなが一致団結して行動をするんだと感心させられた。やはり富士山よりも高い、過酷な生活環境に住んでいる山岳民族だけあって、現代でも信仰心と助け合いの精神はまだまだ根付いていた。