ついに我が家にトイレが設置された。昨年の2か月半の滞在の時は、トイレなしの生活をして、自分でもよく我慢できたな…(2か月半、出さなかったという意味ではありません)と感心したが、これでやっと落ち着ける。
といっても、ちゃんとしたトイレではなく、テント型の簡易トイレですが。近くに住むガイドをやっている方がテント型トイレを持っていたので貸してもらいました。
ただ、組み立てる時に、どうしてもポールがどう組み合わさるのかがわからない。貸してもらった方は別のところでロッジをやっているので、現在はクンデ村にいない。数時間の試行錯誤の後、助け舟を隣の家のご主人に仰ぐと、一目見て「ポールの数が足りない」と言われてしまった。そして枝を持ってきて、大きなナイフで削り出すと、いとも簡単にポールの代用品を作り上げてしまった。さすがシェルパ族!
さっそく使ってみようと思ったら、よくうちに遊びに来る向かいの3歳の女の子が、珍しいものができたと、さっさと一番乗りで「チー」をした。
ちなみに「チー」はシェルパ語で「おしっこ」のこと。初めてこの子がうちに遊びに来た時に、「チー」と言ったが、その言葉のニュアンスや顔の表情で、これは「おしっこ」だなとすぐわかった。ただ、それは恥ずかしいという感じではなく、現にこの子はトイレがあっても、外でお尻を出して歌いながらおしっこをする。
以前、ほかの国で山岳民族のおばさんと一緒に旅をしたことがあった。驚いたことに、このおばさんは休憩の時に、道のど真ん中でお尻を出しておしっこをしだした。別段、恥ずかしいという表情ではなく、堂々と…。もともと山岳民族はトイレを作っていない家も多く、あってもものすごく簡素なものが多い。シェルパ族の家はどこの家にもトイレはあるようだが、それも家の外にトタンなどの簡単な材料で作っている粗末なものだ。ナムチェバザールへの買い出しの時なども、一緒に行ったおばさん方は、家がない山道では「あんた、先に行きなさい」と言って、道のわきで堂々とおしっこをしている。
これも昔の話だが、内戦中のアフガニスタンでは、幹線道路の両脇に地雷が埋まっていた。この道を移動中に、同乗していた女性がトイレがしたくなったのだが、もちろん道端の陰に入ってすることは命懸けだ。恥ずかしさを抑えながら、仕方なく道のど真ん中でするしかない。こちらも目をそらして見なかったのだが、生まれてからトイレを使った生活しかしてこない人は、命がかかっているときぐらいしか人前でお尻を出せない。そういう僕も、人前でお尻を出すのは恥ずかしい。だからテントでもトイレができたのはホッとする。ただ、トイレができても外でするときがある。それは真夜中、満天の星空が見えているときだ。そもそも、こんな満天の星空を見れるところは世界でも少ないだろう。こんなところでテントにこもってしているのは馬鹿らしくなる。よその人が見たら変態だと思われるかもしれないが、お尻を出して夜空を見上げながら「幸せだな」とつぶやいているのだった(笑)。