またまた土日に行われたクンデ村のプジャ(祈祷)についての話題だが、忘れられない体験が2日間にわたり出された毎度の食事。村人でない僕も毎回ごちそうになった。その食事は特別なものではなく、シェルパ族が普段家で作っている素朴なものなのだが、ゴンパ(寺院)のお堂の中でラマ教の僧侶といっしょにいただいた食事は、格別においしかった。食事はその雰囲気によって全く違ったものになる。
まず、初日のお昼はネパールの国民食である「ダルバート」。昼食の前に、僧侶たちには朝食が出されていたと思うが、僕がゴンパに行ったのはその後だったので、このダルバートが僕にとっての初めてのプジャごはんとなった。
首都カトマンズのダルバートと違い、シェルパ族は少しアレンジして、スープカレーのように作るのが特徴。あまりスパイスを使わないため、味はあっさりしていて、日本のカレーのように食べやすい。ゴンパの横にある台所と併設した集会所みたいな場所で、村人が集まってみんなでいただいた。
午後3時、ほとんど休みなしに祈祷を行っている僧侶におやつ?タイム。といっても、日本のようなお菓子ではなく、ジャガイモの料理。これはシェルパ族がディナーでも食べているが、台所で作り方を見ていると、けっこう手間暇かかる食べ物だ。
作り方は、まずジャガイモをゆでて、石のすり板ですりつぶしていく。そのジャガイモがこの地域特産の独特のもので、すりつぶすと、もちのような粘り気が出る。昨年、このジャガイモでコロッケを作ろうとしたが、日本のジャガイモとは全く違い、うまく形が作れなかった。これを熱湯の中に入れ、小麦粉を混ぜながらどろどろにしていき、水分を飛ばしていくと、日本の餅のようになる。これをヤクのチーズと唐辛子を混ぜたスープにつけて食べる。ヤクチーズは独特のにおいがあり、欧米人もけっこういやがるが、この”ジャガイモ餅”だけでも素朴な味でおいしい。
村人総出で行われるプジャだが、意外にも食事を作るシェフは男性が担っている。これは一度に100食分ぐらい大量に作らなければならず、かなりな力仕事なので男の仕事になると思われる。女性たちは、その食事を出す係となる。
さて2日目。今日はプジャが始まる前からゴンパに行き、本堂の中で待機。そういえば昨夜の夕食の写真がないが、これは夕食がなかったわけではなく、ちゃんと「シェルパシチュー」と呼ばれる、日本のすいとんのような料理をいただいた。昨日は午後になると天気が悪くなり、一面霧で気温も下がったため、あったかいシェルパシチューが出されたら、がっついて食べてしまい、写真を撮るのを忘れてしまっただけ(笑)。
プジャは午前7時半から始まったが、朝食は午前8時半、おかゆのようなものが出された。味は日本のおかゆとはちょっと違っていたが、ヨーグルトを使っているとのことだった。朝早いため、本堂の中には村の人はいなかったが、それでもよそ者の僕にもごく自然におかゆを置いていってくれた。
今回、2日間にわたり、朝、昼、おやつ、夕食と出された食事を全面的に担当したのが、この笑顔が素敵なお方。昨年の滞在中に僕はクンデ村からゴーキョにトレッキングに行ったが、その時にガイドをしてくれたので、よく知っている。実はこの方、エベレストに2回登っているすごい人なのだが、いつも村のためには率先して裏方の仕事を引き受けている。プジャでは大量のごちそうが作られるので、それを目当てにやってくる犬にもちゃんとごはんをあげてくれる、気配りいっぱいの優しい方なのだ。
午後2時半、本堂での祈祷が終わり、おやつ代わりに出されたのが、なんとサンドイッチ。これはさすがにシェルパ族の食べ物ではないだろうが、普段からトレッキングで欧米人と接するので、何の違和感もなく、みんな食べている。僧侶たちも食べているが、なぜかみんなパンの耳の部分を残している。やはりぼそぼそしていて食べにくいのかな?
この後、前にアップしたように、神輿を担いで村のはずれで燃やす儀式をして、一連のプジャが終了。
2日間にわたるプジャも無事終了し、ゴンパに戻ってきた僧侶と村の人に出された夕食がこれ。中国の饅頭(まんとう)のような蒸しパンで、日本の中華まんやあんまんのように中の具は入っていない。これにダルバートのカレーをお皿に盛って一緒に食べる。昨日と同じように、夕方になると一面霧が出て、かなり寒い。その中でほかほかの饅頭は体に染み渡った。こういうおいしい体験は、生涯忘れないだろう…。