インド・ニューデリーの滞在もだんだん長くなってきて、メインバザールの安宿街もだんだん飽きてきた。プチ移住というほど今回は長い滞在はしないつもりだが、せっかくだからインドで民泊してみようと考えた。
昔と比べて今の時代はホント便利。ネットでチェックしながら最終的に選んだのは、ニューデリーの郊外、地下鉄の最終駅にある部屋。中心街から地下鉄で30分ほどだが、そこは高層マンション群が立ち並ぶ地域だった。ニューデリーは人工的に設計された町なので、中心街は他のインドの都市と比べて密集している地域はない。しかし経済成長著しく、近い将来中国を抜いて世界一となる人口の増加で、経済的に中流クラスがこの郊外でどんどん増殖しているのだった。
民泊することにした家は、地下鉄の駅から歩いて15分と予想外に遠かったが、このマンション群と反対側にあるにぎやかなショッピングセンターや商店街を見学しながら歩けるので、結構楽しくてあまり苦にならない。
お世話になる家はお世辞にもきれいとはいいがたいが、大家さんはとっても親切(だったのがすごく意外だった)。そもそも僕はインド人に対しては全然いい印象を持っていない。というのも僕が初めて旅行したのがインド・コルカタで、しょっぱなにこっぴどくインド人に騙されたからだ。今でもニューデリー駅や外国人が行く中心街では、にこやかに声をかけてくるインド人がたくさんいるが、これはほぼ100%だましにかかってくる人と思って間違いない。その辺のだましのテクニックは「地球の歩き方」に散々出てくるので、もしインドを初めて旅行する人は読んできたほうが身のためだ。前にミャンマーで1年半暮らしていたが、ミャンマー人もにこやかに声をかけてくる。初め、インドの経験もあり、ものすごく警戒していたが、ミャンマー人の場合はそのほとんどが本心からの親切で声をかけてくる。国が違えばこうも違うのかと思ったものだ。
インドは現在でもカースト制、つまり生まれながらの身分制度が残る国なのだが、外国人はカースト外に位置しているので、基本外国人には冷たい(と僕は思っている)。ただ今回民泊して、その考え方をちょっと変えた。インド人も一般の人は意外と親切なんではないかな…?
マンション群の新興郊外地区でけっこう町はあわただしいのかと思っていたが、”我が家”の前の通りでは道の真ん中で犬が寝ていたりして、いたってのんびりした雰囲気。しかしこの犬は車にひかれるという危険を感じないのだろうか…?
一方でインドではどこに行っても見かける光景だが、ホームレスの子供たちがゴミ拾いをしている。インドでは犬よりも人の方が過酷な生活を強いられているように見える。
インドでは野良犬もいっぱいいるが、野良牛も負けじといっぱいいる。ヒンズー教では牛は神様の乗り物なので、野良牛といっても人々から大切にされている。野良牛たちはゴミ捨て場(といっても道の隅っこに平気で捨ててあるのだが)で食べ物をあさっているが、そこにひっきりなしにえさを与えに人がやってくる。普通、牛のえさといえば草と思うのだが、ここインドではチャパティ(小麦粉を焼いたパンのようなもの)を持ってくる人が多く、しかも牛はおいしそうに食べている。まあ小麦粉だから草食動物も食べるか…。
ある日、食べ歩きでサモサを買って公園で食べていたら、その公園に住み着いている犬の親子を発見。まだ子犬たちは小さく、母親が見守る中でお互いじゃれあいながら元気に遊んでいる。サモサはいろいろな種類があったので、欲張って4個買ってしまったが、おなかいっぱいで全部食べられない。そこで牛がチャパティを食べるのだから犬も喜んでサモサを食べるだろうと思い、食べかけのサモサのうち、カレー味のサモサとホワイトクリームマカロニのサモサの両方を子犬の近くに置いてやった。早速子犬が近寄ってきたが、それを見た母犬が叱ってホワイトクリームマカロニのサモサを自分で食べてしまった。カレー味の方が残ったので、もう一度母犬の近くに持って行ってあげたが、においをかいだだけで食べようとしない。犬にとっては、カレー味はけっこうスパイシーなのか?
いつものように、”我が家”へ帰っていく途中、犬にしては前後にきれいにそろって歩いている動物を見かけた。不思議に思って近づいてみると、なんとイノシシ! いや、よく見ると牙がないので、イノシシとブタのあいの子のイノブタかもしれない。日本では山のふもとの町にイノシシが出没するのは珍しくないが、ニューデリーは大平原の真ん中で山はない。どうしてこんな動物がいるのか…???
さすがインド。民泊してみると、意外なものが見えてくる。