ネパールの標高3840mプチ移住11日目、神に祈る日

ターメから戻った翌日。体の節々に痛みが残る中、午前5時過ぎに窓から外を覗いてみると、村のあちこちから煙が上がっている。

はじめ火事かなとも思ったが、よく見ると村人が庭で何かを燃やしている。

近くに行って聞いてみると、今日はシェルパ族の暦でお日柄がいい日なので、家にお供えしているターシンという旗を3か月に1回、新しいものに取り換える日なのだそうだ。

家から50mぐらいしか離れていないお宅でちょうど作業をしていたので見学させてもらった。

まず、5色の布を竹に括り付ける。青色は空、白は雲、赤は火、緑は草、黄色は地面を表しているそうだ。シェルパ族の家にはこの旗が必ず掲げられているが、神様が幸運をもたらしてくれるようにという願いなのだそうだ。

ターシンを用意したら、シェルパ族の正装に着替え、儀式が始まる。

まず庭で葉に火をつけて燃やし始めると、急いで家の中に入り、今度は台所のかまどに火をつける。そのあと、お茶(時にはどぶろく)とお米を備え、呪文のようなものを唱えながら時々米粒をまく。それで終わるのかと思っていたら、また外に小走りに出て行って葉っぱを燃やし、また家の中で呪文を唱えたりと、かなりあわただしい。

その儀式を見ていたら、借りている家の大家さんの義理の弟さんがやってきて、私の”別荘”のターシンを交換してくれるという。やはりシェルパ族の正装姿でやってきて、同じようにあわただしく外と家の中を行ったり来たりしながら儀式を進めていく。最後は庭にあるターシンを新しいものに交換して無事終了。

ところで僕はシェルパ族の信仰心について、ちょっと誤解をしていたようだ。このエベレスト街道には世界中から観光客が集まり、そのマネーを求めてシェルパ族はガイドやロッジ経営などさまざまなビジネスをしている。その姿を見ていると、この好景気にしっかりため込んでおこうと突進しているのかと思っていた。

しかしここは富士山よりも標高が高い、険しい山岳地帯なのだ。この過酷な土地で生活していくことは厳しく、生きているだけでも難しい。そして実際に毎年、登山やガイド中に命を落としている方々がいる。シェルパ族はそのような危険な日々を「今日も無事、過ごさせてもらった」という感謝の気持ちを常に持って暮らしているのだと、今日のターシンの儀式を見ていて気付いた。

考えてみると、標高こそ、ここほど高くはないが、日本も決して生きていくには楽ではない山岳地帯を持つ島国だ。今でこそ便利になってしまい、そんなことを考えもしないで生活をしているが、戦前までは生活になんの保証もない過酷な生活をしていたはず。僕も長年、会社という安泰な生活をしていてすっかり危機意識を失ってしまったが、シェルパ族に見習って、毎日感謝の思いをもって暮らしていきたいものだ。反省…。

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