せっかくタイ国境まで来ているのだから、タイのメソトの街まで行ってタイとミャンマーの経済格差などを見てこようと、日帰りで出国することにした。
国境に架かる橋
朝8時、ホテルから歩いて国境ゲートをくぐりミャンマーを出国する。といっても手続きは簡単で、イミグレーションでパスポートを出し出国スタンプをもらうだけ。ミャンマー人はパスポートはいらずに自由にタイと行き来できるので、ここで手続きをするのは外国人だけ。ここから出入りする外国人は少ないので、イミグレもすいている。
国境に架かる橋といってもご覧の通り、普通の橋と何ら変わりはない。歩道も人が2人並べばいっぱいになってしまうほどの幅しかない。橋の上から見ると、ミャンマーとタイを隔てている川も一層小さく見える。
驚いたことに、この国境の橋の上に物乞いの家族がいた。国境といえば、両国が厳重に警備され、監視されている地帯だろう。そこで堂々と物乞いができるのだから、この両国間は現在のところ、全く緊張感がないということなのだろう。
ぶらぶら歩いても10分ほどでタイ側のゲートに到着。タイ側もイミグレでパスポートを提出し、入国スタンプをもらうのみ。簡単にタイに入国できた。
タイ側の街メソト
入国したはいいけれど、ミャンマーのミヤワディのように国境ゲート前に街はなかった。聞くとタイ側のメソトの街はここからちょっと離れているという。ソンテウという乗り合いバスに乗ればいいと教えてもらい、ゲート前に止まっていた小型ピックアップトラックの荷台に乗りこむ。荷台が満員になると出発する。一緒に乗り合わせた赤ちゃんが、知らない外国人を怖がって見ていた。
ソンテウがどこに行くかもわからなかったが、乗り合いバスの乗客はすべてタイ人のおばさんで言葉が通じない。仕方なく乗っていたら、着いたところは大きな市場だった。
タイの地方都市とはいえ、ミャンマーから来ると明らかに街並みが立派だ。タイとミャンマーの経済格差を感じてしまう。
市場の隣にはセブンイレブンがあった。ミャンマーではコンビニはヤンゴンぐらいにしかないが、日本のレベルで見れば、とてもコンビニとは言えない品ぞろえ。タイで久しぶりに見るコンビニがとっても新鮮だった。
ミャンマーのミヤワディで初めて見た、前方に荷台を付けたバイクだが、これはやはりタイ側で利用されていたものがミャンマーに輸入されたみたいだ。自転車の人力タイプもあるが、これはバイクを付けたもの。ガソリンタンクにはヤマハとあるがエンジンは中国製のようだから、部品を組み合わせて作っているのだろう。
実はメソトにはかなり前に来たことがある。大型ショッピングセンターがあったので、そこを目指して歩き出した。地元の人に「あっちだこっちだ」とタイ語で言われながら進む。メソド0キロ、ミヤワディ8キロという表示があった。
メソドの街の中にはまだ古い家も残されている。店先では、涼みながら新聞を読む老人もいて、ゆったりとした時間が流れている。
しかし歩けど目的地は見えてこない。さすがに疲れてきて立ち止まっていたら、バイクで通りかかったご老人が「どうした」と声をかけてくれた。「ロビンソンに行きたいんだけど」と伝えると、まだかなり距離があるということで、バイクに乗せて連れて行ってくれた。ありがたや。
お目当てのロビンソンは、日本でいえばイオンのような大型ショッピングセンター。ここに来ると何でもそろってしまう。トイレの中もバスケットコート風になっていて面白い。
しかし、この中で物資の豊かさを見てしまうと、ミャンマーがいかに経済的に遅れているかを実感してしまう。とともに、物資の豊かさだけが幸せのバロメーターなのかということも考えさせられるのだが…。
ロビンソンの中に日本でもおなじみのミスタードーナッツがあった。メニューにはタイ語のほかにミャンマー語でも表示されている。ここだけでなく、ミャンマー語を併記している店も多く、多くのミャンマー人がタイ側で買い物をしていることがわかる。
ミャンマーにはこんなおしゃれな建物はないので、街を歩いていてもデザイン的におもしろい。
といってもタイもまた、まだまだ発展途上。車の荷台に荷物を満載し、その上に人が乗っている光景なんかはミャンマーと何ら変わらない。ミャンマーも数年もすればタイのように経済発展し、人々の生活もタイ並みになっていくのだろう。
再び国境ゲート
タイの生活ぶりを見た後、再び国境ゲートに戻る。ロビンソン周辺ではソンテウがいなかったので、タクシーに乗ったのだが、国境に向かう立派な国道が大渋滞で全く動かない。こんなにもミャンマーに向かうトラックが多いのかとビックリ。
実はタイ側に入国するときに、橋のふもとにかまぼこ型の大きなドームみたいな建物があり気になっていた。そこに行ってみたら、国境の市場だった。これからミャンマーに出国しようとしている人が買い物をしている。
ここでバイクツーリングをしているグループに会った。KTMなどで来ているグループはマレーシア人。ハーレーに乗っている白人たちはアメリカ人でタイをツーリングしていた。ライダーは最果てが好きなので、国境を目指してやってきたという。ミャンマーでは見かけない大型バイクがうらやましい。
ちょうどお昼だったので、この近くの食堂でタイ料理の昼食。かなりお客がいたのでおいしい店だろうとふんで入った。麺を注文したが、油こってりのミャンマー料理ばかりだったからおいしかった。
昼食後、再び国境に架かる橋を渡ってミャンマーに帰る。ミャンマーの入国審査もパスポートを提出し、入国スタンプを押してもらい終了。ただマルチビザを持っていないと再入国はできませんので注意。
ミャンマーに戻ってみると、やはり街並みがタイ側に比べて貧弱だ。現在、ミャンマーは開放政策でヤンゴンだけは発展著しいが、地方ではまだまだ昔のままだ。小さな川を隔てただけでこれほど世界が違うのが国境の摩訶不思議なところ。ミャンマー人のあこがれの世界がすぐお隣にある。