シェルパ族
エベレスト街道に住んでいる山岳民族がシェルパ族だ。
この民族は「世界最強」と言われ、ヒマラヤ登山にはシェルパ族のサポートなしに達成できないほどだ。
1953年5月29日、エベレストに人類初登頂したエドモンド・ヒラリーとともに頂上に立ったのがシェルパ族のテンジン・ノルゲイだった。
エベレスト街道に訪れる外国人の急増で、シェルパ族の生活は急速に変化しつつある。昔から過酷な山の生活環境の中で神々を恐れ、チベット仏教を深く信仰する一方、観光業から落とされるお金により生活は豊かになり、貧しい農村からロッヂが立ち並ぶ村になり、街道の風景は一変している。
【チベット仏教】
山の中の生活は危険がいっぱい…、過酷な山の生活の中で無事に過ごせることを祈り、シェルパ族は毎日祈りを捧げる。山の尾根には村に悪霊が入り込まないように、五色の祈祷旗タルチョをはためかせる。エベレスト街道を歩いていると、いたるところに神々を感じる。
【マニ・リンドゥ】
毎年11月の満月の日の日中に、タンボチェ寺院では仮面舞踊劇「マニ・リンドゥ」が行われる。この祭典の起源は明らかでないが、年中行事となったのは1930年ごろだと言われている。現在はブータン、シッキム、インドのラダックでしか行われていない。演じているのは僧侶だが、さまざまな仮面が登場し、時にはおかしく、時には深刻なストーリーで見ていて飽きない。近隣の村人も楽しんでいるが、チベット仏教の教えを仮面舞踊劇で伝えている。
【畑作業】
高冷地のこの地域ではジャガイモ以外の野菜は育たない。冬に備え、芋を地中の中に保存し、暖かくなるころに掘り出す。最近ではシェルパ族がお金持ちになってきたため、出稼ぎ労働者が農作業を手伝いにやってくるようになった。
【運ぶ】
車が走れるような道がないエベレスト街道では、荷物運びは人力が頼り。驚くような荷物を背負って、人々は歩き続ける。4歳の女の子は毎朝母親といっしょに、自分専用のポリタンクを持って村の共同水場に水汲みに行くことが日課だ。
【シェルパ族の家】
エベレスト街道は木が育たない高冷地なので、家は石を積み上げて作っている。最近ではお城のような立派な家も見かけるようになった。
【動物】
シェルパ族を助ける家畜はヤク。登山ブームが起きる前は農業が主体だったため、どの家もヤクを飼っていたが、観光業が盛んになるにつれてヤクを売り払い、牧草地にロッヂを建てる人も多くなってきた。過酷な生活環境ではあまり動物を見かけないが、高山に生息する雷鳥はなかなか人懐こくてかわいい。
【そして変わっていくシェルパ族の生活】
空前の登山ブームでエベレスト街道を訪れる登山者や観光客が急増している中、シェルパ族の生活も大きく変わりつつある。多くの宿泊客を受け入れるための燃料が必要なため、大型のヘリコプターでプロパンガスを運び上げている。ナムチェバザールの店に入れば、商品棚にはいろんな種類のお酒が、まるでコンビニのように並んでいる。そしてクレジットカードでの支払いもできるのだ。生活が便利になっていく一方で、ゴミ問題や燃料不足などの問題も起きているのが現状だ。