けっこうかわいい顔のマチェンドラナート神

プチ移住していたエベレスト街道のクンデ村から首都カトマンズに降りてきたが、ビザ延長をして、まだ滞在している。ちょうどカトマンズの隣のパタンという街で、マチェンドラナート祭というお祭りが行われている期間だったので、せっかくだから、これを最終日まで見ようとパタンに移ってきた。実はこの祭り、1か月以上にわたり行われる、世界でもっとも長い祭りのひとつらしい。


ネパール カトマンズ マチェンドラナート

6月6日、マチェンドラナート神を乗せた山車が、最終日にセレモニーが行われる場所に移動した。山車は市内のいくつかの場所で数週間留まりながら移動してきたが、この日が山車が動く最後の日。朝から多くの人が参拝に訪れている。神様本体は山車の中に安置されており、写真は山車の舳先に取り付けられている神様の化身だが、人々はこれに触ったり頭を付けたりして拝んでいく。


ネパール カトマンズ マチェンドラナート


ネパール カトマンズ マチェンドラナート


ネパール カトマンズ マチェンドラナート

神様本体はこちら。結構かわいらしいお顔をしている。この神様は雨と豊穣の神様で、雨季に入る今頃にこのお祭りが行われる。ヒンズー教徒からはシバ神、仏教徒からは観音菩薩として、両教徒から信仰されている。山車の周りでは、朝から音楽を奏でたり、お経を唱えたりする信者たちでにぎわっている。


ネパール カトマンズ マチェンドラナート

参拝者を見ていると、油を入れた燈明を顔の前でくるくる回し、神様にお祈りをしている。だいたいは小さなものだが、中には大きな皿にいくつもの芯を入れた特別なものを用意してくる人もいて、ほかの人がそこから火をもらったりしている。


ネパール カトマンズ マチェンドラナート


朝からここに来ているが、周りの人に聞いても、山車が移動する時間を誰も正確に知らない。ある人は「午後3時ごろ」。別の人は「午後4時から」。近所のお店の人は「いつもだいたい午後5時ごろから動く」という。いったい何時から動くのか?ただネパールでは、このお祭りに限らず、正確な時間などみんな気にしていない。「ネパーリータイム」という言葉があるくらい、時間はいい加減な国民性だ。

午後4時過ぎ、やっと動きそうな気配がしてきた。山車の車輪は木でできている。人の背丈ぐらいあり、かなり大きい。この車輪を止める車止めみたいな道具が運び込まれた。しばらくすると、昔の軍隊のような恰好をした一段が現れ、神様に向かって軍刀を掲げ一礼している。


ネパール カトマンズ マチェンドラナート

午後5時、きっかりに山車の舳先に先導者が乗り、その合図をきっかけにロープが引かれ始めた。なんだ、スタートは午後5時、しかも結構きっかりに始まったじゃないか。なんで周りの人は知らなかったんだろう…、と思いながら見ていると、けっこう勢いよく山車が横に向き始めた。この山車の車輪は曲がることはできないので、横方向にみんなでロープを引っ張って向きを変えていく。京都の祇園祭の山車も同じような構造で、共通点は多い。この文化の起源は同じなのではないか。


ネパール カトマンズ マチェンドラナート

山車が直進し始めると、舳先の先導者がだんだん興奮状態になってきた。それとともに、ロープを引っ張っている人たちも陶酔状態になってきたようで、少し動いただけでこぶしを振り上げ大声で叫んでいる。ほかの祭りではよく車輪にひかれて死亡者が出たりするので、これはちょっと危険になってきたと思い、距離を置いて見ることにした。


ネパール カトマンズ マチェンドラナート


ネパール カトマンズ マチェンドラナート

山車が通る大通りはすでに人でいっぱい。両側に立つビルの屋上に登らせてもらい見ていると、人で埋まった中をゆっくりと山車が近づいてくる。山車の高さはだいたい7階建てのビルぐらいある。写真を見てもわかるように、人が豆粒に見えてしまうくらい山車は高い。山車は大きいのと、小さい山車もあり、後ろからくっついてくる。

山車は多少傾きながら進んでいて、倒れそうだなと思ってみていると、周りの人が言うには、実際に倒れる時もあるらしい。その年は凶作になるとされ、縁起が悪いとされるとか。この日は最終地まで無事、たどり着きました。

3日後の6月9日。この日はマチェンドラナート祭のセレモニーが行われる最終日。近所の人に聞くと、「午後4時から」「午後5時から」とまたまた時間がばらばら。見学の場所取りもかねて、午後3時に行くと、道路はまだ車が走っていて、始まる気配はない。


ネパール カトマンズ マチェンドラナート

しかし山車の乗っている人たちのTシャツ、何とかならないものか。企業名が入っているので、おそらくスポンサーなんだろうが、伝統的なお祭りの雰囲気をぶち壊している。セレモニーを行う参加者は民族衣装を着てきているのに、なんで神様の周りにいる人はTシャツなんだろう?


ネパール カトマンズ マチェンドラナート


午後4時を過ぎて、やっと山車が止まっている前のロータリーが通行止めになった。今日は首相や政府の要人が来てセレモニーをするので、周囲の警備は厳重だ。もちろん一般の人の数もすごい人が来ているが、見ているとその人たちの観覧席はないようで、狭い歩道にみんな追い上げられている。山車の近くには全く近づけないので、ほとんどの人は遠くから見るしかなさそうだ。毎年やっているのに、もう少し多くの人が見れるような工夫をしてもいいと思うのだが…。




ネパール カトマンズ マチェンドラナート

ネパールん首相が到着したのがきっかり午後5時。なんだ、今日も時間が決まていたんじゃないか。

首相が到着して音楽など聞こえるが、一般の人は何が行われているか見えないので、さっぱりわからない。そしてしばらくすると、山車の上で小さな黒い服が四方に掲げられる。これがこの日のメインセレモニー。ここに集まった人々は、これを見にやってきているのだ。外国人にはあまり興味なさそうなセレモニーだが、周りからは歓声が上がっている。


ネパール カトマンズ マチェンドラナート


ネパール カトマンズ マチェンドラナート

セレモニーも終わり、首相が会場を後にすると、多くの人々は帰っていく。厳重な警備が解かれ、山車のすぐ近くまで近づけるようになると、一部の人が山車の周りに集まり出した。そして安置されていた山車の中からマチェンドラナート神が出され、下に用意された神輿に移される。ここから7キロほど離れた場所に運ばれ、半年以上そこでお暮しになるのだとか。

このお祭りが終わると、ネパールでは雨季が始まると言われている。今年はプチ移住していたエベレスト街道もずーと天気が悪かったが、カトマンズも同じだったようで、みんなが異常気象だと言っていた。すでにここ数日、スコールがたびたびきて、すでに雨季に入ったかのような天候だ。このような異常気象の中、今回は山車も倒れず、無事にマチェンドラナート祭も終わったので、秋の収穫も豊作が期待されるだろう。なかなか面白いお祭りだった。

投稿者: asiansanpo

元読売新聞東京本社写真部。2016年3月、早期退職し、アウンサンスーチーの新政権が誕生したミャンマーに移り住み、1年半にわたり全土を回りながらミャンマーの「民主化元年」を撮影。2018年9月からは、エベレストのふもと、標高4000㍍の村で変わりゆくシェルパ族とともに9か月間生活した。日本では過疎地を拠点とし、衰退していく地方の実態を体験している。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

Translate »