標高3840㍍でストレスについて考えてみた

先日、「子猫の徹底観察」でネコの生態について調べていたところ、野良猫はそのほとんどが子猫の時にストレスで死んでしまうということを知って、かなり衝撃を受けてしまった。ストレスの問題は人間のことだと思っていたが、生き物全部の命にかかわることなのだと改めて考えさせられた。


うちに毎日やってくる子猫はもともと野良猫だ。この子猫もストレスと闘っているのだろうか。確かに、昼間は外に狩りに出かけるが、ネズミなどの獲物を捕まえるのはけっこう難しいだろう。この前はカラスに襲われているところを見かけたが、子猫だから天敵に狙われることも多いだろう。夜になれば、今晩の寝床を確保するために人間に愛想を振りまいて泊めてもらう。考えてみれば、子猫も相当ストレスを感じているに違いない。

ただ我が家で過ごしている子猫の姿を見ていると、どう見てもストレスは感じてなさそうだ。我が家に来ると必ず肉は食えるし、腹いっぱいになれば窓際のひだまりで昼寝。そして目を覚ませば、残っている肉を食べ、今度は寝袋の上でまた寝る。まさに「寝子」だ。逆に言えば、外に出ているときのストレスを我が家で癒しているのだろう。まあここが子猫の安泰の場所であるならば、短い時間だがいくらでも提供してあげようと思う。


ネパール エベレスト街道 クンデ 子猫

ところで僕自身のストレスはどうなんだろうと思い、ネットのストレスチェックをしてみた。ストレス度の質問が40問あったが、チェックしていったら該当する項目が2点しかなかった。そもそも会社勤めをしていないので、設問中の会社での質問が当てはまらないこともあるが、自分自身の感覚でも、限りなくストレス度ゼロに近いと思う。

早期退職をしたときに、自分なりの規律を決めたのだが、その一つに「絶景の中で暮らす」ということがある。現在「プチ移住」しているクンデ村も、世界遺産のヒマラヤの山々の中にあり、日が差して暖かい時にはその山を見ながら日向ぼっこをするのが日課だ。こんな生活ではストレスを感じることはまずない。いや待てよ、よく考えてみると、いくつかある。まず寒いところが苦手だが、ここは4月に入ってもまだ雪が積もる。それと食材が手に入らない。ジャガイモしか育たないところなので仕方がないが、買い出しで買ってくる食材の多くは消費期限切れだ。おそらくカトマンズで売れ残った食材が流れ流れてここまでやってくるのだろう。だからおいしいものが食べられないのがストレスといえばストレスだ。ただストレス度チェックの項目にはそんな質問はない。

そもそもストレスって何なんだ?ネットで調べてみると、いろいろな解釈があるみたいだが、外部からの圧力で心理的、身体的に歪んでしまうことをいうらしい。日本人の場合、その症状や原因の多くが会社が関係しているようだ。いまや日本の9割がサラリーマンなので当たり前だが、そういう僕も30年弱サラリーマンをしてきたのでよくわかる。今、会社員時代を振り返ってみても、毎日、満員電車で通勤し、会社ではアホな上司に振り回され、仕事の成果は追及される。こんな生活していたら、ストレスを感じないほうがおかしいのだ。もし会社生活で心身ともにストレスで異常をきたしたら、悪いことは言わない、僕のような生活をすればいい。ストレスフリーの生活はものすごくいいことは間違いない!


ネパール エベレスト街道 クンデ 子猫

ではシェルパ族の人たちは、山の暮らしをどう思っているのだろうか。大家さんの義母は厳冬期にはカトマンズに降りて過ごしているが、口癖が「早くクンデに帰りたい」だ。都会の暮らしはそれこそストレスで、空気がいい、のんびりしている山の生活の方が断然いいという。一方で、大家さんは便利なカトマンズの生活に慣れてしまい、山の生活はもう考えられないという。これは日本でも同じで、東京の便利な暮らしがいいか、田舎暮らしがいいか、であり、つまりストレスは人によって感じ方が全く逆になる。

さて、子猫と毎日我が家で遊ぶ3歳の女の子は、将来どちらにストレスを感じるのだろうか。まあとりあえず子猫と同じ姿でランチを食べている姿を見ていると、今の段階ではストレスとは無縁のようだ。いつから人はストレスを感じるようになるのか、それも人によって違うのだろうが、この2人(2匹?)がいつまでも元気でいられることを願おう。

投稿者: asiansanpo

元読売新聞東京本社写真部。2016年3月、早期退職し、アウンサンスーチーの新政権が誕生したミャンマーに移り住み、1年半にわたり全土を回りながらミャンマーの「民主化元年」を撮影。2018年9月からは、エベレストのふもと、標高4000㍍の村で変わりゆくシェルパ族とともに9か月間生活した。日本では過疎地を拠点とし、衰退していく地方の実態を体験している。

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